HPLCでは、
「試料を溶かす溶媒の溶出力は、移動相より弱いほうが良い。」
という掟があります。逆相クロマトグラフィーを例にとって説明します。50%メタノールが移動相のとき、試料を溶かすのはメタノール濃度50%以下が良いということです。100%メタノールに溶かした場合は、クロマトグラムへ影響を与える場合があります。
「メタノールに溶かして注入しているけど、大丈夫だよ。」
と思っている方も多いと思います。注入量が少量(経験的には、4.6×150mmのカラムに10μL程度)ならば、掟を守らなくても分離に対しての影響は、受けにくくなります。これは、少量の試料液が、まわりの移動相に薄められるからだと考えられます。
しかし、条件によっても異なりますが、一般的には、注入量が多くなるほど、溶出が早い成分ほど、小さな内径のカラムを使用している条件ほど、以下のような症状があらわれやすくなります。
①ピークがブロードになる。
②ピークが割れる。
③保持が弱くなる。
④分離が悪くなる。
こういった現象に出会うのは、試料溶解溶媒の掟を破っていることが、原因となっている場合があります。移動相に対しての試料溶解溶媒の溶出力に関する項目として以下の4つに注意してください。(カッコ内は注意を要する分離モードを示す。)
ⅰ)極性(順相、逆相)
ⅱ)pH(逆相、イオン交換、イオンペアー法)
ⅲ)塩濃度(イオン交換、逆相)
ⅳ)イオンペアー試薬(イオンペアー法)
ⅳ)について説明します。試料はイオンペアー試薬とイオン対を形成した状態で注入されることが望ましく、特に大量に注入する場合、これらが守られていないとピーク形状が悪くなったり、保持が弱くなったりする場合があります。イオン対の形成は、pHにも影響されますので、溶解溶媒のpHにも注意が必要です。
①~④のトラブルでお困りでしたら、試料溶解溶媒を調べてください。案外簡単に解決できるかもしれません。