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2012年10月15日月曜日

HPLC分析のコツ(18) 蛍光検出器のお話 その2

今回は蛍光検出器の波長設定についてのお話です。UV検出器と違って、蛍光検出器では励起光と蛍光、2つの波長を設定しなくてはなりません。一般に、励起波長<蛍光波長<(励起波長)x2となります。

   図 蛍光試料の励起波長(左)と蛍光波長(右)

励起波長も蛍光波長も化合物特有の値を持っています。ただし、pH、溶媒組成などにより変化することがあります。分析を始める前に、おおよその値は分かっているはずです。搭載されている検出器のスペクトル測定機能を使って、より正確なそれらの波長を求めることもできます(上図)。

UV検出器の場合は、選択性と感度の兼合いから波長を設定することもあると書きましたが、蛍光検出器の場合は、選択性が高いので感度に絞って波長を決めます。ここで少し寄り道をして、蛍光検出器の「感度」について話しましょう。

以前、UVやRI検出器には縦軸の目盛りはあるが蛍光検出器には基準がないという説明をしました。だから、蛍光検出器では単純に、ピーク高さだけで感度を比べることができません。つまり、異なる機種間で検出器の感度設定を同じにして、ピーク高さを比較しても意味はありません。

それじゃあ、どうやって感度を比較するか。正しくはS/N比で比較しなければいけません。同じ装置の場合でも、やはりS/N比でみるべきです。

寄り道が長くなってしまいました。話を元に戻します。蛍光検出器では「感度を中心に波長を設定すればよい」ということでしたね。基本は、感度で最適波長を設定すればよいのですが、次のような場合には注意をしてください。

①励起波長と蛍光波長が近い。
②励起波長の倍の波長と蛍光波長が近い



このような場合には、一般にバックグランド光が大きくなり、思ったほど高感度にはなりません。原因は、励起光の一部が光側に検出されるからです。

励起光の一部はいつでも光側に入ってきているのですが、波長の差が大きく異なれば、光側で分光され問題とはなりません。しかし、①のような場合は、検出されてしまいます。


②について説明します。検知器では目的の波長を取り出すため蛍光側にも回折格子が使われています(図)。回折格子から得られた光は、その仕組みから、波長の半分、2倍、3倍の成分も含まれています。当然、これらの波長成分も蛍光側に入りこみます。②は倍光の影響を受けるということです。

図 蛍光検出器の構造

①と②では対処方法が異なります。原理的に①のケースではあまりよい方法がありません。蛍光波長を少しづつ長波長側に動かしてデータを取り、S/N比を計算して最もよい波長を選びます。

②の場合には、倍光をカットするようなフィルターを励起光側に入れてください。バックグラウンド光に対して、ある程度の低減効果があるはずです。用意されているフィルターの種類、波長特性などは、それぞれの装置の取扱説明書を参照してください。

■参考

2012年9月26日水曜日

HPLC分析のコツ(17) 蛍光検出器のお話 その1

さて、今回から蛍光検出器のお話です。毎日、分析を始める前にまずここを見ます。調子の悪いときも真っ先にここを見ます。それは、光源ランプの明るさと、フローセルからでる光の強さです。


EX(excitation)とあるのは励起光の強さ、EM(emission)は蛍光の強さを表しています。励起光の強さとは、光源ランプの明るさのことです。蛍光の強さとはフローセルからでている光の強さのことです。UVとは異なり、EXは大きい程いいのですが.セルのEMは小さいほどいいです。UVではどちらも大きい方がよかったのですが。EXの値は光源ランプや励起光側の光学系の状態を反映し、励起する光が強ければ強いほど、サンプル測定時に強い蛍光が出ます。つまり、高感度で検出できることになります。この値は、ランプが劣化すると徐々に小さくなっていきます。波長が違うと値も変わります。



図 セルに照射した際の励起光(EX)と蛍光(EM)

EMの値はフローセルからの光です。この値はべースラインノイズの大きさと関連しています。EMの値が大きければノイズも大きくなります。従ってS/Nは悪くなり、検出感度も悪くなります。値の大きさは移動相やフローセルの汚れ等を反映し、Gainを変えたときや、波長を変えたときにも変化します。特に、EXとEMの波長が近いときや、EXの2倍の波長に近いときに大きくなります。

蛍光検出器では、ブランク測定時のEMの値を小さくしないと高感度分析はできません。また、EXが大きくないと高感度になりません。(この話は、次回に詳しくお話ししたいと思います。)

この機能の使い方ですが、基本的にはUVと同じです。毎日、同じ移動相、同じ波長で分析しているときには、EXでランプの劣化の状態が分かります。EMでは移動相やフローセルのよごれ具合、ノイズの大きさが分かります。運転ノートに記録しておけばランプ交換の時期を予想することができます。ただ、UVの場合と違ってEXの値はランプをつけた直後と、安定してからでは値が少し違います。小さな違いはあまり気にしないほうがいいと思います。

■参考

2012年9月12日水曜日

HPLC分析のコツ(16) UV/VIS検出器のお話-その4

今回も懲りずにUV/VIS検出器です。
本題にはいる前に、検出器の仕様(スペック) の項目を少し説明します。


  • 波長再現性(波長を設定時の誤差)
  • 波長正確さ(設定波長とのズレ)
  • スペクトルバンド幅(スリットを通過した単色光の広がり)

さて、HPLCのシステムを何台も使っているところでは、同じ波長で検出しているはずなのに、 検出器によってピーク高さが違うなんて事を経験されたところもあるんではないでしょうか。

 その理由を説明します。ここで問題になるのが、波長正確さです。 日本分光のUV-4070では±1nmです。例えば、250nmに波長を設定しても、実際には装置によっては 249nmから251nmのどこかの波長が選ばれているということです。最大2nmの違いが生じる可能性があります。装置によってピーク高さの異なる原因がこの2nmの違いなのです。特に、 シャープな吸収スペクトルを持つた化合物で顕著に現われます。絵で説明します。
 
波長が吸収極大付近にないときは、図のように2nmの違いが、吸光度に大きく反映します。 ところが吸収極大付近では、ほとんど吸光度は変わりません。絵で描くととてもよく分かりますね。


図 測定波長と吸光度

じゃあ、波長正確さをもっと上げればいいのではと考えるのは素人の浅はかさ。私もこう思って専門家に聞いたところ、「原理的にはその通りです。でも、波長正確さだけではなくて、そこにはスペクトルバンド幅との関係があってそれほど簡単ではないのです。 」と諭されました。その理由はよく分からないのですが、とっても難しそうです。

はじめに書いたような事を経験された人、理由を分かって頂けましたか。次号からは、蛍光検出器を取り上げます。

2012年8月22日水曜日

HPLC分析のコツ(15)UV/VIS検出器のお話-その3

UV/VIS検出器の3回目です。1回目は 「しっかりとした根拠の元に検出波長を決めましょう。」、2回目は「電圧表示の利用の仕方。」でした。

さて今回は、「光源ランプのあれこれ」です。UV/VIS検出器には.重水素ランプ(D2ラ ンプ)のみを光源として持つものと、D2ランプとタングステンランプ(Wランプ)の両方を持 つものがあります。日本分光の商品ですとUV-2075は前者に、UV-2070は後者にあたります。 海外メーカーの機器にはキセノンランプを光源に使ったものもあります。

光源は検出波長によって切り替えてください。紫外部(190-370nm)ではD2ランプを、 可視部(371nm以上)ではWランプを使ってください。波長に合った光源を選択することにより ノイズが小さくなります。したがって、S/N比のよいクロマトグラムが得られます。
 D2ランプしか持たない機種では関係ないのですが。ランプを2種類持ったものでは上に書いたような使い分けが必要です。
 どうしてかって?

あわてないあわてない。これから説明します。

「UV/VIS検出器では光源が明るいほどいい」と前回お話ししたのを覚えていますか? この理由をまだ説明していませんが、ここでも「ふーんそんなもんかいね、検出器ってゲーテみたいなんやね。」 と思っておいてください(何でゲーテかって、そんなこと文学少年に聞いて)。 光源の明るさがランプの種類と波長によって違うからです。 

D2ランプは 230nmが一番明るく紫外部200nmから300nm付近までは充分明るいのですが、それ以上波長が長くなるにつれて段々暗くなっていきます。400nm以上では230nmの10分の1程度の明るさしか得られません。 



Wランプは紫外部ではほとんどエネルギーがないのですが、360nm付近から徐々に明るくなっていき440nmから700nmまでほぼ一定の明るさが得られます。



それじや、D2ランプしか光源に持っていない装置は可視部では使えないのか。けっして、 そんなこともありません。検出限界付近で使わなければ全く問題なく使えます。
では、今までの説明は何だったかということになりますが、装置を使う上での原則を知っておいて欲しかったこと、 今自分の使っている装置にどんなランプが使われていて、それがどういう特徴を持っているのかを知っておいて欲しかったからです。 「原理を理解して装置を見切って使う」、HPLCの性能を引き出すのに不可欠でしょう。

応用例を話します。日本分光にDAB-Labelプレカラム誘導体化アミノ酸分析システムがあります。アミノ酸をダブシル化して検出する方法で、既に論文で報告されています。論文では436nmで検出していました。
436nm、どこかで見た数字ですね。ダブシルアミノ酸の移動相中での極大吸収は460-470nm にありました。検出器のランプがWランプの時、436nmに比べ465nmでは約1.2倍のピーク強度が得られました。検出限界で比べると1.5倍程度高感度でした。Wランプでは436nmより465nm の方が明るいからです。

ところが、D2ランプを使ったときは436nmの方が検出限界が高いという結果が得られました。吸収極大波長で検出することによるピーク高の増加より暗くなることでノイズの増加が大きくなるからです。ちなみに、465nmでのREF電圧で、WランプはD2ランプの10倍くらい強くなります。

■参考
UV-4570紫外可視吸光度検出器(動画)

HPLCの基礎(4)各種検出器の特徴

2012年8月1日水曜日

HPLC分析のコツ(14) UV/VIS検出器のお話-その2

今回はUV検出器の便利な機能についてです。ランプの交換時期や、フローセルの汚れ具合が分かるのでとっても重宝しています。それ以外にも、検出器の調子が悪いときは真っ先にこれを見ます。今はPC等のソフトウェア上で分かるかもしれませんが、中身を知っておいても損はないかと思います。

UV検出器には、光源ランプの明るさと、フローセルを透過した後の光の強さを見る機能があります。じゃ、ちょっと説明します。上の段はフローセルを通過した後の光の強さを、下の段は光源ランプ の明るさをそれぞれ示しています。どちらも、電圧が高いほど明るい(光が強い)事を示しています。 光が強いほうが検出器の調子はいいです。ランプが劣化するにつれてREF電圧、SAM電圧共に下がります。検出波長を変えても、REF、SAM電圧 ともに変化します。でも、移動相に吸収のない波長範囲では、REF電圧とSAM電圧の比はほぼ一定です。理由 は後で説明しますが、ここでは、

「REF電圧は絶対値何Vが大切で、SAM電圧は絶対値よりREF電圧との比が大切」

だと覚えてください。

REF電圧とSAM電圧

では、利用の仕方を説明します。REF電圧は、ランプの状態(フローセル通過前の光の強さ)を表します。 同じ波長で使っている場合、この電圧を定期的に記録しておけばランプの劣化具合が分かります。 「REF電圧が0.5Vになったからそろそろランプを変えなきゃいけないな」なんて事も判断できるかも知れませんね。

次はREF電圧とSAM電圧の比の使い方です(SAM電圧自体はフローセル通過後の光の強さを表します)。これを利用してフローセルや移動相の状態を判断します。 一つは、フローセルのセル窓の汚れです。もう一つは、移動相の吸収です。SAM電圧はランプの劣化つまりREF電圧が変わるとそれに伴って動きます。 それで、絶対値ではなくREF電圧との比で見るわけです。同じ波長、同じ移動相条件で分析しているときに、REF電圧とSAM電圧の比が小さくなってきたら、 もしくはREF電圧は変わってないのにSAM電圧が下がってきたら、フローセル窓の洗浄が必要です。 突然、SAM電圧だけが下がったら、特に移動相を作り替えた時そうなったら、移動相の汚れ、もしく は移動相組成を間違えた可能性があります。

こんな風に、電圧のチェックはとても便利な機能です。私はUV検出器を使っているとき、1日に1回はこの値をチェックします。なにか検出器関係のトラブルが起きたときも一番先にこの数字を見て原因を探します。皆さんも、毎日分析を始める前にこの値を見るのを習慣にしてはいかがですか。検出器をいつもベストな状態に維持するために。

■参考
UV-4570紫外可視吸光度検出器(動画)
HPLCの基礎(4)各種検出器の特徴


2012年7月18日水曜日

HPLC分析のコツ(13) UV/VIS検出器のお話-その1

今回は検出器の話をします。まずは一番ポピュラーな検出器、紫外可視分光検出器(日本語で書くと何のことか分からなくなりそうですが、UV/VIS検出器です)から始めます。

検出器で大切なのは、選択性と感度です。UV検出器の場合、選択性を決めるのは検出波長です。本題にはいる前に横道にそれて、弊社セミナーで妙に感心される話題から始めます。

クロマトグラムの検出波長に、254nmや280nmが多い理由を知っていますか。いまでこそ波長可変の検出器は当たり前ですが、昔は、低圧水銀ランプを光源にした検出器がほとんどでした。この装置は水銀の輝線(254nm)を利用していたので検出波長を選ぶことは出来ません。したがって検出波長も254に決まっていたのです。この波長に
極大吸収があるとか、選択性がよいと言うことでは決してありません。核酸とか芳香族化合物の検出に適していたのでよく使われました。

波長可変型のUV検出器の光学系(上図)
「280nmは何の輝線かな?」なんて辞書を引いてる人もいるかも知れませんね。鉛、マンガン、ビスマス辺りが候補に上がってると思いますがハズレです。水銀の輝線(254nm)を白い粉(何か分かりません、もしご存じの方があったら教えてください)に当てると280nmの蛍光がでます。この波長が(強い吸収を持つため)、蛋白質の検出に使われてきたため、254、280nmの2波長を選択できる検出器がありました。  この他にも214nm(Znランプ)、229nm(Cdランプ)や水銀ランプとフィルターを組み合わせた436、456nm等が使われています。いかにも意味有りげな検出波長は、こんな風にランプの輝線で決まっていたのです。

本題では
「文献や過去のデータに惑わされないで、目的成分に適した波長を判定しましょう」
と言いたいのです。

とは言ってもただ単に感度を上げるために極大吸収波長にすればいいという事でもありません。選択性を上げるために感度を犠牲にして長波長側にずらしたり、逆に選択性に目をつむって感度を稼ぐために短い波長に設定したりと言うケースもあります。目的に合わせて検出波長を設定しましょう。
 一般に、波長を短くすると感度は良くなりますが、選択性は無くなり妨害ピークの影響を受け易くなります。逆に、波長を長くすると選択性は向上しますが、感度が悪くなります。ただ妨害ピーク等の選択性の点については、検出器だけではなく、前処理や分析条件を含めた分析全体で考える必要があります。 

■参考
UV-4570紫外可視吸光度検出器(動画)

HPLCの基礎(4)各種検出器の特徴

2012年7月4日水曜日

HPLC分析のコツ(12) 移動相の話、まとめ

今回は、有機溶媒について触れたあと、移動相の話を総まとめします。
はじめは、Hexaneについて。順相クロマトグラフィーでよく使われる溶媒で、通常は移動相としてn-ヘキサンと表記されます。 市販のヘキサンは、n-ヘキサンを95%以上含むヘキサン異性体の混合物です。 同じような性質の混合物なので、気にする必要はないのですが、正確にはヘキサン類、hexanesと書くようにしたいものです。

つぎに、クロロホルムです。HPLC用のクロロホルムには2種類あるのをご存知ですか? 安定剤が違います。0.5~1%のエタノールを含むもの、アミレンで安定化されたものです。 サンプルによってはアルコールがあると不安定なものもあります。知っておくと何かのときに役に立つかもしれませんね。

つぎは、テトラヒドロフランです。この溶媒は、主に2つのケースで使われます。 有機溶媒系のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)移動相として、もうひとつは逆相クロマトグラフィーにおけるオーガニックモディファイヤーとしてです。 SECでRI検出器を使う場合は、安定剤の入ったものを使います。分取、もしくはUV検出器を使うSECや、逆相クロマトグラフィーでは、 安定剤の入っていないものを使います。

これまでの移動相の話をまとめます。

1.混合溶媒の組成は正しく表示しましょう。
  パーセント表示と比率での表し方、どちらが悪いということではなくて作り方に対応した表記をしましょう。

2. W/Wで作るのか、V/Vで作るのか。
  混合溶媒を再現性よく作るには、比率に見合った精度のでる計量法を使うようにしましょう。

3.unambiguousかつuniqueな移動相条件の記載を。
  あいまいな表現や、作り方が何通りもあるような移動相条件の書き方はやめましょう。

4.pHメーターを使わないで緩衝液を作りましょう。
  省力化と再現性の向上に効果があります。   V/Vの組成を決めるまではちょっと面倒ですが、決まってしまえば再現性も良くなるし、かなり省力化できます。大量に作ることも可能になります。

6回にわたって、長々と書いてきた移動相の話はとりあえず終わりです。

2012年6月20日水曜日

HPLC分析のコツ(11) 緩衝液の話2

85%のリン酸を425倍希釈したときのリン酸のモル濃度を計算してみましょう。 1L作るのに必要な85%リン酸の量は、1000/425=2.35mLです。 この重量は、2.35×1.69=3.97gです。 この中のリン酸の重量およびモル数は、3.97×0.85=3.38、3.38/97.995=0.03449となり、 それぞれ3.38g,34mMとなります。 つぎに最もいい加減な作り方である、85%リン酸を2mLとって1Lにしたときの濃度です。 これは、上の計算結果を使って、34.49×2/2.35=29.35,29mMとなります。

話が長くなりましたが、言い訳をさせてください。 分離で大切なのは、チャンピオンデータではなく、クロマトグラムの再現性です。 だから、この再現性に関わる移動相の調整方法というものを非常に重要と考えています。

さて、今回も緩衝液のお話です。皆さんは、緩衝液を作るとき、pHメーターを使ってpH調整をしていませんか? 私はこれが苦手です。メーターの校正、pH標準液や電極の管理とか面倒ですよね。 pHメーターが他の人に使われていたら、待たなくてはならない。 というわけで、私はpHメーターを使わないで緩衝液を作るようにしています。

「それでは、どうやってやるのかって?」 試薬を正確に秤量して、緩衝液を作っています。保持時間の再現性には全く問題ありません。 管理の悪いpHメータを使うよりも再現性の良いデータが得られます。

しかし、実際やってみると面倒なことも多いのです。 望みのpHになるような試薬の混合具合を試行錯誤しなければいけないからです。 このあたりの見当をつけるのに、化学便覧の「緩衝溶液、組成とpH値」の表を参考にしています。

Michaelisの緩衝液の中の1/30Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.4を作ってみましょう。 表からはM/30m,KH2PO4:M/30,Na2HPO4でpH6.4になることがわかります。 このまま作成すると、陽イオンはNaとKの2種類になってしまいます。 移動相条件を単純にするために陽イオンをナトリウム1種類にします。 それには、リン酸1カリウムの代わりにリン酸1ナトリウムを使用すればいいわけです。 表の値から必要な試薬の量を計算して、水に溶かせば出来上がりです。 M/30は、0.033Mとして計算します。 リン酸1ナトリウム・2水の分子量は156.10で、必要な量は156.10×0.033×2/3=3.43, 3.43gになります。 次に、リン酸2ナトリウム12水の量は、358.14×0.033×1/3=3.94gです。 秤ではかって、水を加えて1Lにすれば完了です。

自分の目的にあう緩衝液が表に無い場合は、最初に表を作成しなくてはなりません。 条件検討の際はpHメータを使い、条件が決まったら重量法で作製します。

たかがpH調整と思っている人もいるかもしれませんが、毎日のことなので意外と省力化できます。

また、pH調整無しで緩衝液を作れるようになると、緩衝液と有機溶媒の混合移動相を作製することも出来てしまいます。 あらかじめ作っておいた水と有機溶媒の混合液を秤量した試薬に加える。

今日の話はここまで、次回で緩衝液の話は最後にしたいと思います。

2012年6月6日水曜日

HPLC分析のコツ(10) 緩衝液の話1

今回は緩衝液についてのお話です。

疑問1、なんの濃度?
緩衝液の濃度が、緩衝能を示す弱酸、弱塩基の量を示すことは知っています。 ピリジン-酢酸の場合には、pHに関係なく、ピリジンの濃度をさすという例外があることも知っています。 ここで困ってしまうのが、よく使うリン酸です。

例えば、10mM NaH2PO4の場合、pH6.5のときの10mMというのは、リン酸の濃度のことです。 ところが、pH2.5の緩衝液では、10mMは、Naの濃度をあらわしているのです。 同じリン酸緩衝液で、違いがあります。 どっちのpHでも、はじめは10mM分のNaH2PO4・2H2Oを水に溶かします。 この時のpHは4.5くらいです。pHを6.5にするには、NaOHを加えます。 2.5にしたいときは、リン酸でpHを調整します。もうわかってしまいましたね。 pHにより加えるものが違ってくるので、濃度を示すものも変わってしまうのです。 「pH2.5のときには、はじめにリン酸を10mM分計っておけばいいじゃないの」 と思われるかもしれませんが、それはできません。 10mMはかりとるようなリン酸というものが無いからです。 市販のリン酸は、約85%の水溶液です。これじゃ、簡単に10mMなんて作れませんよね。

疑問2、0.2%リン酸はどうやって作ったの?

図 リン酸二水素ナトリウム

クロマトグラフィーの条件をみていると、0.2%リン酸というのが出てきます。 実際作るときになってみると、 「これはリン酸の濃度で0.2%なのかな?」 「85%リン酸が0.2%入っているということなのかな?」 「この%はW/Wなのか、W/Vなのか?」 論文の中に使われていたとき、多くの人はリン酸濃度0.2%(W/V)だと理解すると思います。 問題は、オペレーターがどうやっているかということですが。

この問題に対しては、3通りの作り方がされていると思います。

①約85%のリン酸を425倍に希釈する方法(0.2%,W/V)
②85%リン酸はW/Vでは何%になるかを計算して希釈する方法(0.2%,W/V、作製方法は後述)
③85%のリン酸を2mLとって1Lにする方法

移動相条件の書き方と作り方が1対1で対応していないのはすっきりしません。

疑問1に関しては、10mM NaH2PO4, pH2.5(H3PO4)と書けば良いのです。 疑問2に関しては、%を書かないで、モル濃度で表せばいいのではないかと考えています。

ただし、計算することが必要になります。 0.2%V/Wは何モルか? リン酸の分子量は97.995、比重は1.00として計算します。 1L中に含まれるリン酸の重量は、1000×0.2/100=2.0gで、そのモル数は2/97.995=0.020、20mMとなります。

次はどうやって作るかという話です。簡単です。 85%リン酸を425倍に希釈すれば良いのです。この方法だと、W/Wの0.2%になってしまいますね。 まず、85%(W/W)リン酸のモル濃度を計算します。比重は1.69で計算します。 1Lの重量は、1000×1.69=1690、1690gです。 この中のリン酸の量は、1690×0.85=1436.5、1436.5gです。 これをモル数に直すと、1436.5/97.995=14.66、14.66Mになります。 つぎに0.2%つまり、20mMの作り方を考えます。 85%リン酸何mLが20mMに相当するかを計算すればいいわけです。 0.02=14.66×y, y=0.02/14.66=0.00136 1.4mLを1Lに希釈すればいいことになります。

実際のリン酸濃度に関しては、次回掲載します。

2012年5月23日水曜日

HPLC分析のコツ(9) 再現性の良い混合溶媒の作り方

今回は、再現性の良い混合溶媒の作り方についてお話します。

本題に入る前に、混合する精度がどの程度必要なのかを考えてみます。 混合比率の変化は保持時間の変化となってあらわれます。 一般に、高速液体クロマトグラフィーでは化合物の同定は保持時間のみで行われます。 移動相を作り直すごとに、保持時間が大きく変わるようでは困ります。 逆相クロマトグラフィーである化合物を分析した場合、アセトニトリル濃度10%と11%を比べると、 保持時間は13.7分から11.8分へ、約2分も動いたことがありました。0.1%の変化で0.2分(12秒)動くことになります。どのあたりを精度目標にするか、大変難しいのですが、0.1%~0.2%にしたいと思います。 上記の例の場合、0.5%では1分以上保持時間が動きます。これではあまりにも大きすぎます。かといって、0.05%を目標にすることは現実的に困難です。 例えば、1Lの移動相を作る場合、100.0mLと100.5mLを区別しなければいけないからです。

では、どのようにすれば、0.1%の精度で移動相を作成できるのでしょうか。ポイントは計量器の精度(最小目盛)です。 結論から言いますと、10%以下はメスピペット、メスシリンダーで作り、それ以上は天秤を使います。10%以下も天秤で計って移動相を作っても良いのですが、 使い慣れたピペット、メスシリンダーでも精度は出ます。

10%以下の例について記述します。100mLのメスシリンダーでは99mLと100mLを計り分けることができます。 一方、1Lにフィルアップするときに使うメスシリンダーでは、990mLと1000mLを計り分けることはできます。こうして出来上がった移動相の組成は9.9~10.1%の範囲に入ります。もっと少量の場合ではどうでしょうか。1%の場合、9.9mLと10mLは十分計り分けることができます。この場合、0.99%~1.01%となります。

今度は、10%以上について考えてみましょう。20%を0.1%の精度で作るには、199mLと200mLとの区別ができなければなりません。200mLのメスシリンダーでは、これが不可能です。最小目盛が2mLだからです。ここで電子天秤に登場してもらいましょう。これを使うと、200.1gと200.0gさえ計り分けることができます。あとは全量を1LにすればOKです。比重をもとに体積を重量に変換しておかなければなりませんが。

天秤を使ったことによって、新しい混合溶媒の表し方が出てきました。 重量%と重量比です。どちらもあまり見かけません。私の場合、 重量%で表示しなければいけないような作り方はしません。 重量比で作った場合でも、比重で計算して体積比として表示しています。

さて、ここで%表示と比率での表示について考えます。どちらが得かというお話です。2.9%を作ることは簡単です。29mLを1Lにメスアップすればよいだけです。ところが、97.1:2.9を作ることはできません。1Lのメスシリンダーで971mLを計りとるのは不可能だからです。このように考えると、量が少ないときは%表示の方がよさそうです。 天秤で作るのであればどちらも可能ですが、天秤で作るのは大変です。

%表示で混合溶媒を作るとき、注意して欲しいことがあります。 充分に混合してから、全容を1Lにして下さい。10%メタノールの場合、水500mL入れてメタノール100mLを加え、よく混合したのちに水を加えて1Lにしてください。 水900mLの上にメタノールを静かに加えて2層があまり混合しないように、注意深く1Lにする。こんなことは、しないでください。

2012年5月9日水曜日

HPLC分析のコツ(8) 移動相条件の表記方法


1. 混合比率

混合溶媒の混合割合の表記方法には、パーセント表示と比率での表示の2つが使われています。
本題では、これらの是非を問うものではなく、両者を区別して正しい表記方法の使用を薦めるものです。

表記方法には、それぞれに対応した混合方法があります。例えば、パーセント表示に対応する混合溶媒の作成方法は、5%メタノール、水の場合、メタノール5mLに水を加え、全量100mLにするというものです。
これに対し、比率での表示に基づく溶媒作成方法は、メタノール:水=5:95の場合、メタノール5mLと水95mLを混合するというものです。 全量は100mLより少なくなり、正確な値は解りませんが、メタノール濃度を%表示すると、5%より大きくなります。これは、水とメタノールの分子の大きさの違いで体積変動が生じるためです。このように2つの方法で作成した移動相に含まれるメタノール濃度は微妙に異なり、この違いはクロマトグラム上では保持時間の差となってあらわれてきます。タンパク質やペプチドの逆相クロマトグラフィーを行うとき、溶出される、されないという極めて大きな問題となります。

このようなトラブルを未然に防ぎ、保持時間の再現性の向上や個人差の解消をなくすためには、 混合溶媒の組成表示を正しくすることが必要です。

2.混合比率、少し複雑な場合

それでは、次の場合はどうなるのでしょうか?

a) 10%メタノール/50mM酢酸
b) 50mM酢酸/10%メタノール

これらの表示に対応する移動相の作成方法は、

a) メタノール10mLに50mM酢酸を加えて、全量を100mLにする。
b) 10%メタノール水溶液に50mMになるように酢酸を加える。

b)の場合、メタノール濃度は10%と一定なのに対し、酢酸の濃度が変化します。

以上述べてきたように、混合溶媒の作り方とその表示方法には意味があります。 正しく使えば、保持時間の再現性の向上や個人差によるトラブルを解消できます。

2012年4月12日木曜日

HPLC分析のコツ(7) 試料溶媒と移動相溶媒のお話

HPLCでは、

「試料を溶かす溶媒の溶出力は、移動相より弱いほうが良い。」

という掟があります。逆相クロマトグラフィーを例にとって説明します。50%メタノールが移動相のとき、試料を溶かすのはメタノール濃度50%以下が良いということです。100%メタノールに溶かした場合は、クロマトグラムへ影響を与える場合があります。

「メタノールに溶かして注入しているけど、大丈夫だよ。」
と思っている方も多いと思います。注入量が少量(経験的には、4.6×150mmのカラムに10μL程度)ならば、掟を守らなくても分離に対しての影響は、受けにくくなります。これは、少量の試料液が、まわりの移動相に薄められるからだと考えられます。
しかし、条件によっても異なりますが、一般的には、注入量が多くなるほど、溶出が早い成分ほど、小さな内径のカラムを使用している条件ほど、以下のような症状があらわれやすくなります。

①ピークがブロードになる。
②ピークが割れる。
③保持が弱くなる。
④分離が悪くなる。


こういった現象に出会うのは、試料溶解溶媒の掟を破っていることが、原因となっている場合があります。移動相に対しての試料溶解溶媒の溶出力に関する項目として以下の4つに注意してください。(カッコ内は注意を要する分離モードを示す。)

ⅰ)極性(順相、逆相)
ⅱ)pH(逆相、イオン交換、イオンペアー法)
ⅲ)塩濃度(イオン交換、逆相)
ⅳ)イオンペアー試薬(イオンペアー法)

ⅳ)について説明します。試料はイオンペアー試薬とイオン対を形成した状態で注入されることが望ましく、特に大量に注入する場合、これらが守られていないとピーク形状が悪くなったり、保持が弱くなったりする場合があります。イオン対の形成は、pHにも影響されますので、溶解溶媒のpHにも注意が必要です。
①~④のトラブルでお困りでしたら、試料溶解溶媒を調べてください。案外簡単に解決できるかもしれません。

2012年3月28日水曜日

HPLC分析のコツ(6) ステンレス配管の内径と使い分け

今回のお話は配管と内径の使い分けです。
HPLCに使われているステンレス配管の外径は、1/16インチ、約1.6mmで共通です。
しかし、内径は、0.1~1.0mm と様々な大きさがあるのを知っていました?

ただし、大抵の場合は、0.25と0.5mmの2つが主に使われています。
2種の使い分けは

「試料の流れるところは、内径0.25mmのものを使い、試料の流れないところは内径0.5mm のものを使う。ただし、検出器を出てからは内径0.5mmでよい」

ということです。簡単ですね。
もちろん、納品時にはこうなるように組んであります。

「装置を移動したら、ピークがブロードになった」

というトラブルの原因のほとんどは

「インジェクターからカラムの間が太い配管になっていた」

というものです。
図 HPLCシステムと配管の内径

また、次のような場合も気を付けてくださいね。

検出器を複数台直列に接続して測定する場合、例えば、UV検出器とRI検出器とか、の場合は、1台目の検出器から2台目の検出器の間の配管は、内径0.25mmにしてくださいね。1台目から2台目の間の配管でピークが、拡がってしまうことがあります。

お心あたりの方は一度配管の内径をチェックしてみてください。

「セミミクロや分取の場合はどうなるかですって?」

忘れてました。ごめんなさい。

セミミクロ(カラム内径 1~2mm)の場合はカラムと検出器の間は内径0.1mmの配管を使います。

オートサンプラーまたはインジェクタとカラムの間は 0.1mmを使います。
このときは配管の目詰まりに注意しなければなりません。

ピークのカラム外での拡がりに注意しましょう。もちろん、オートサンプラーやインジェクタ-は、セミミクロに対応しているものを使用してくださいね。
 
分取のときは、太めの配管を使えばいいのです。
分離ということを考えると、0.25mmがいいのですが、流速が早くなるので配管での圧力が高くなってしまうため、太めの配管を使わざるを得なくなります。

分取というとカラムサイズ、流量も幅広いので

「これだ」と決めるわけにはいきません。

内径0.5~1.0mmの配管をシステムに合わせて使う必要があります。

2012年3月16日金曜日

HPLC分析のコツ(5) サンプルループのお話

今回はサンプルループの話です。

「実際のループの容量には、規格の値の±10%の誤差があります。」
具体的には、「20μL と表示してある サンプルループの容量は、18~22μLのバラツキがあります。メスフラスコのように一定容積になっていませんから、注意してください。」ということです。

例えば、検量線を作るのに20μLのループを使ったところで、5、10、20μLの試料を注入したとすると、20μLのところで、予想よりも値が小さくなることがあります。理由は明らかですよね。このように、シリンジ注入で使う場合は、ループの容量の50%を最大注入量の目安にすると良いでしょう。
ループ注入というのは、極めて再現性の良い注入方法ですが、注入絶対量は正しくありません。また、 同じ試料でも、装置毎にピークの面積や高さは異なります。これも、サンプルループ 容量の個体差に基づくものなのです。

では、なぜこのような誤差が生じるのか。これは、ループの作り方に原因があります。

(内径×1/2)2×3.14×長さ

サンプルループ(200μL)
で、ループの内容量が決まります。あとは、決められた長さで配管を切って、 サンプルループに仕上げていきます。 問題は、ステンレス配管の内径の精度です。これは、内径に関係なく、0.03mm(1/1000インチ)ですので、0.5mm配管では±10%、0.76mm配管では±7%、0.3mm配管では17%の誤差が生じます。

ループ容量と内径の関係は、20~100μL(0.5mm)、200~1000μL,2000~5000μL(1.0mm)となります。

2012年3月1日木曜日

HPLC分析のコツ(4) ODSカラムの長期保存-結果報告

前回、「缶詰対干物」と言う力ラムの保存方法について書いたことを覚えていますか?
これに対して「あかん! データがないならちゃんと測定しなさい。」との命令が下りました。今回は、その報告と干物保存法の落とし穴についてです。

実際に試験をしてみました。力ラムは、一般的なODSカラム(TMS処理してあるモノメリックタイプの充填剤)を2本を使い、1本は密栓して保存、もう1本は栓をしないで保存して、約7ケ月毎に理論段数を測定しました。

缶詰力ラムは、始めた時の段数120007ヶ月後に11000に、14ヶ月後には9000まで落ちました。これに対し干物力ラムは、始めた時の130007ヶ月後で1260014ヶ月後でも12000とほぼ開始時の性能を維持していました。

ODSカラムの保存法は、干物法に軍配が上がりました。とりあえず私も約束を果たせたし、記事の正しさも証明できて本当に良かったと思ってます。

ただし、今回の実験は一つの事例です。充填剤の種類や特性、カラム内に入っている溶媒によって結果は異なります。特に、ポリマー系充填剤、GPCGFCやイオン交換カラムは、干物にするとカラムがダメになってしまうので注意してください。絶対適用しないで下さいね。

カラムの保存方法は取扱説明書に記載されていますので、記載された方法で行ってください。

さて、もうひとつお話を付け加えておきます。逆相系カラム(ODSなど)を水や緩衝液がほぼ100%の移動相で使用することがあります。このような溶媒で使用した場合、測定終了後の翌日など分析種のピークの保持が極端に短くなり、早く溶出してしまいカラムが劣化してしまったと判断することがあります。
しかし、この現象は逆相系カラムの疎水性と移動相溶媒の濡れの関係によって生じるという説が発表されています。簡単に言うと充填剤の細孔から、移動相が抜け出してしまい、その部分が分離の相互作用に係わらないことになり、保持が弱くなって、早く溶出してしまうデータとなってしまうということです。
このような場合は、一度、有機溶媒が7080%程度含まれる移動相を流すことにより、保持が回復することがあります。最近では、このような症状が発生しない、水系溶媒100%でも使用できるカラムが販売されています。

だんだん便利な世の中になってきましたね。同じ逆相系カラムのODSと言っても、様々な特徴があります。カラムの特性を良く知っておくことが、安定して測定できる良い分析条件を作ることができることにつながるんですね。

2012年2月17日金曜日

HPLC分析のコツ(3) ODSカラムの長期保存


▼干物か缶詰か
ある日の午後、私とLC応用開発の某氏と、
今回のテーマである「ODSカラムの長期保存方法」について話をしていました。
(以下、私:私、LC応用開発某氏:某、営業イチョカミ:イ の略)









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私:やっぱ干物やで。

某:そうかなぁ、缶詰だと思うけど。


と話をしているところへ、営業のイッチョカミ氏が、2人の話に入ってきました。

イ:そりゃ冷凍に決まっとるがや。え~か、こういうの僕詳しいの。
と言うなり、彼は冷凍食品の便利さを説明しはじめました。電子レンジでチンするだけだとか、
最近はフライもオーブントースターで簡単に作れるとか。
こののメーカーの何がおいしくて、何がおいしくないかとか。

私:あのなイっちゃん、ぼくら何話していたか知っている?

イ:知らん。

私:あのね、今、ODSカラムの保存方法について話をしてたの。

イ:ふ~ん。そうか、じゃまして悪かったなぁ。

と言って、彼はさっさと帰ってしまいました。

某:でも、イさん、冷凍食品のこと本当に詳しいね。

私:うん、何や、イさんの奥さん、しょっちゅう実家に帰るから自然と覚えてしまったらしいんやて。

某:ふ~ん。独身でよかった。 私:ほんでな、ODSの保存方法やけど、やっぱ、
アセトニトリルで洗ったあとは、メイルプラグもしないでほっといて、
中を乾かした方がええと思うんや。ODSもはがれんし。

某:そりゃ、ODSがはがれないということなら、干物の方がいいと思うけど、
カラムに「す」がはいったりしない?
やっぱ溶媒が乾かないようにキチッと栓をした缶詰法がいいと思うよ。

私:お前、若いくせに頭古いな。わし、何本もこうやって干物にしているけど、問題ないぞ。

某:そうかなぁ、でもどこのカラムの取説にもそんな事書いてないよ。うちのにも書いてないじゃない。

私:そうや。そやからどないした言うねん。

某:だからさ、本当に干物でいいの。そんな事、こんな公式のみんなが見ている文章に書いていいの?

私:...そ、そこや問題は。経験的には、干物の方がええんやけどな、データはないし。
そんな実験やるのも面倒だし、時間も ないし。う~ん。

某:ほらほら、自信ないんじゃない。

私:こいつぅ、腹立つやっちゃな。自信はあるわな。ただデータがないゆうとるだけなんや。データがな。

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天の声
「こらぁ、いいかげんな話をしているんじゃない。これを読んだ人が干物法で、
カラムを壊したらどうするんだ。データをちゃんと  出しなさい。苦情が来たら、給料から天引きするぞ。」

私:でも時間かかるしぃ。1年以上、検証してみないと...

天の声
「時間をあげましょう。1年なり2年なり、好きなだけ検証して、
ちゃんとしたデータを出しなさい。ここで、こんな話を持ち出 したんですから、
最後までやってもらいます。」

私:げっ、とんだやぶ蛇になってしまった。

というわけで、この結果は次項で紹介します。

2012年2月6日月曜日

HPLC分析のコツ(2) カラムは「なまもの」?

▼はじめに
生物ですのでお早めにお召し上がりください。という土産ものについている注意書きを読んで「げげっ、この中に何か生き物がはいってとんのか、そりゃ早よ食べないかんわな。こんなもん、長いことおいといたら、エサもやらないかんし、逃げ出しでもしたらたいへんやし。でも、ちょっと待てや。こんな中に生き物なんてはいっているはずないで。あっ、そうか、これ、なまものって読むんか」なんて経験はありませんか。私はわかっていても度々こういう勘違いをしてしまいます。これは、生物を「せいぶつ」と読んでしまい、せいぶつ=生き物と考えてしまうことによるものではないかと思います。この生物をせいぶつと読んでしまうのは、受験勉強の「生物」で苦労したその後遺症ではないかと考えるのであります(生物の先生ごめんなさい)。




▼カラムの消費期限
「購入したカラムは早めにお使いください。」

というお話が今回の題材です。最もよく利用されているODS カラムを例にとって説明します。カラムの多くは、カラム検査に用いた移動相(アセトニトリル:水など)で満たされた状態で出荷されます。これは、カラムにとって理想的な保存状態であるとは言えません。長い目でみるとカラムによっては、徐々にシリカゲルと結合しているODS基が、はがれていくものもあります。従って、購入直後のカラムと長期保存(半年から1年以上)してあったカラムでは、充填剤の状態が違ってくることがあります。当然、保持時間や分離挙動も変わってきます。従って、購入したカラムの性能を十分利用して頂くためには、早めに使用していただくのが一番よいのです。

それじゃあ、「使い終わったカラムの保存方法は?」と疑問を持たれた方もいるかと思います。次回はそのあたりをお話したいと思 います。

2012年1月23日月曜日

HPLC分析のコツ(1) ODSカラムの洗浄方法

▼はじめに

酢は体にいい。昭和26年生まれの母は、夏になると毎日、酢の物を作ってくれました。「夏バテには酢がいいんだよ、あんた」と言いながら私の気持ちもしらないでセッセと作ってくれました。おかげで結婚した今も、酢の物を見ると母を思い出してしまうのです。これはきっとパブロフの犬と同じ条件反射 conditioned reflex というのではないかと思います。
今回から始まったこのコラム、何も「宴会で飲みすぎた体に酢がいいですよ」という話をしようというわけではありません。ここでは HPLCを使う上で、

知っておいても損はしないノウハウのようなものを、

毎回取り上げていこうと思っております。少しでも役に立てれば幸いです。


▼カラムの洗浄
さて、HPLC分析のコツその第1回は、シリカ系ODSの洗浄方法についてです。特にナトリウム、カリウム等を含んだ緩衝液を移動相として使ったODSカラムを洗浄するとき、直接アセトニトリルやメタノール等の


有機溶媒を流すと塩が析出して流路やカラムが詰まることがあります。


かといって、


水を流すと、カラム内のpHが酸性や塩基性に変化することがあり、

カラムの性能を低下させることがあります。


こんなときは、移動相溶媒の塩を除いた移動相溶媒(有機溶媒と水の混合比は同じまま)に1%程度の酢酸を加えた溶媒でカラムを十分に洗ってください。と言うわけで、体にいい酢の話ではなくて、「ODSカラムの洗浄方法」でした。
そういえば、ODSカラムと一言でいいましたが、その耐久性や耐溶媒性などの特性は、カラムの種類や使用する溶媒の内容によって異なりますので、注意してください。
必ずご使用中のODSカラムの取扱説明書を確認してくださいね!