2012年8月22日水曜日

HPLC分析のコツ(15)UV/VIS検出器のお話-その3

UV/VIS検出器の3回目です。1回目は 「しっかりとした根拠の元に検出波長を決めましょう。」、2回目は「電圧表示の利用の仕方。」でした。

さて今回は、「光源ランプのあれこれ」です。UV/VIS検出器には.重水素ランプ(D2ラ ンプ)のみを光源として持つものと、D2ランプとタングステンランプ(Wランプ)の両方を持 つものがあります。日本分光の商品ですとUV-2075は前者に、UV-2070は後者にあたります。 海外メーカーの機器にはキセノンランプを光源に使ったものもあります。

光源は検出波長によって切り替えてください。紫外部(190-370nm)ではD2ランプを、 可視部(371nm以上)ではWランプを使ってください。波長に合った光源を選択することにより ノイズが小さくなります。したがって、S/N比のよいクロマトグラムが得られます。
 D2ランプしか持たない機種では関係ないのですが。ランプを2種類持ったものでは上に書いたような使い分けが必要です。
 どうしてかって?

あわてないあわてない。これから説明します。

「UV/VIS検出器では光源が明るいほどいい」と前回お話ししたのを覚えていますか? この理由をまだ説明していませんが、ここでも「ふーんそんなもんかいね、検出器ってゲーテみたいなんやね。」 と思っておいてください(何でゲーテかって、そんなこと文学少年に聞いて)。 光源の明るさがランプの種類と波長によって違うからです。 

D2ランプは 230nmが一番明るく紫外部200nmから300nm付近までは充分明るいのですが、それ以上波長が長くなるにつれて段々暗くなっていきます。400nm以上では230nmの10分の1程度の明るさしか得られません。 



Wランプは紫外部ではほとんどエネルギーがないのですが、360nm付近から徐々に明るくなっていき440nmから700nmまでほぼ一定の明るさが得られます。



それじや、D2ランプしか光源に持っていない装置は可視部では使えないのか。けっして、 そんなこともありません。検出限界付近で使わなければ全く問題なく使えます。
では、今までの説明は何だったかということになりますが、装置を使う上での原則を知っておいて欲しかったこと、 今自分の使っている装置にどんなランプが使われていて、それがどういう特徴を持っているのかを知っておいて欲しかったからです。 「原理を理解して装置を見切って使う」、HPLCの性能を引き出すのに不可欠でしょう。

応用例を話します。日本分光にDAB-Labelプレカラム誘導体化アミノ酸分析システムがあります。アミノ酸をダブシル化して検出する方法で、既に論文で報告されています。論文では436nmで検出していました。
436nm、どこかで見た数字ですね。ダブシルアミノ酸の移動相中での極大吸収は460-470nm にありました。検出器のランプがWランプの時、436nmに比べ465nmでは約1.2倍のピーク強度が得られました。検出限界で比べると1.5倍程度高感度でした。Wランプでは436nmより465nm の方が明るいからです。

ところが、D2ランプを使ったときは436nmの方が検出限界が高いという結果が得られました。吸収極大波長で検出することによるピーク高の増加より暗くなることでノイズの増加が大きくなるからです。ちなみに、465nmでのREF電圧で、WランプはD2ランプの10倍くらい強くなります。

■参考
UV-4570紫外可視吸光度検出器(動画)

HPLCの基礎(4)各種検出器の特徴