前回、「缶詰対干物」と言う力ラムの保存方法について書いたことを覚えていますか?
これに対して「あかん! データがないならちゃんと測定しなさい。」との命令が下りました。今回は、その報告と干物保存法の落とし穴についてです。
実際に試験をしてみました。力ラムは、一般的なODSカラム(TMS処理してあるモノメリックタイプの充填剤)を2本を使い、1本は密栓して保存、もう1本は栓をしないで保存して、約7ケ月毎に理論段数を測定しました。
缶詰力ラムは、始めた時の段数12000が7ヶ月後に11000に、14ヶ月後には9000まで落ちました。これに対し干物力ラムは、始めた時の13000が7ヶ月後で12600、14ヶ月後でも12000とほぼ開始時の性能を維持していました。
ODSカラムの保存法は、干物法に軍配が上がりました。とりあえず私も約束を果たせたし、記事の正しさも証明できて本当に良かったと思ってます。
ただし、今回の実験は一つの事例です。充填剤の種類や特性、カラム内に入っている溶媒によって結果は異なります。特に、ポリマー系充填剤、GPC・GFCやイオン交換カラムは、干物にするとカラムがダメになってしまうので注意してください。絶対適用しないで下さいね。
カラムの保存方法は取扱説明書に記載されていますので、記載された方法で行ってください。
さて、もうひとつお話を付け加えておきます。逆相系カラム(ODSなど)を水や緩衝液がほぼ100%の移動相で使用することがあります。このような溶媒で使用した場合、測定終了後の翌日など分析種のピークの保持が極端に短くなり、早く溶出してしまいカラムが劣化してしまったと判断することがあります。
しかし、この現象は逆相系カラムの疎水性と移動相溶媒の濡れの関係によって生じるという説が発表されています。簡単に言うと充填剤の細孔から、移動相が抜け出してしまい、その部分が分離の相互作用に係わらないことになり、保持が弱くなって、早く溶出してしまうデータとなってしまうということです。
このような場合は、一度、有機溶媒が70~80%程度含まれる移動相を流すことにより、保持が回復することがあります。最近では、このような症状が発生しない、水系溶媒100%でも使用できるカラムが販売されています。
だんだん便利な世の中になってきましたね。同じ逆相系カラムのODSと言っても、様々な特徴があります。カラムの特性を良く知っておくことが、安定して測定できる良い分析条件を作ることができることにつながるんですね。