2012年5月9日水曜日

HPLC分析のコツ(8) 移動相条件の表記方法


1. 混合比率

混合溶媒の混合割合の表記方法には、パーセント表示と比率での表示の2つが使われています。
本題では、これらの是非を問うものではなく、両者を区別して正しい表記方法の使用を薦めるものです。

表記方法には、それぞれに対応した混合方法があります。例えば、パーセント表示に対応する混合溶媒の作成方法は、5%メタノール、水の場合、メタノール5mLに水を加え、全量100mLにするというものです。
これに対し、比率での表示に基づく溶媒作成方法は、メタノール:水=5:95の場合、メタノール5mLと水95mLを混合するというものです。 全量は100mLより少なくなり、正確な値は解りませんが、メタノール濃度を%表示すると、5%より大きくなります。これは、水とメタノールの分子の大きさの違いで体積変動が生じるためです。このように2つの方法で作成した移動相に含まれるメタノール濃度は微妙に異なり、この違いはクロマトグラム上では保持時間の差となってあらわれてきます。タンパク質やペプチドの逆相クロマトグラフィーを行うとき、溶出される、されないという極めて大きな問題となります。

このようなトラブルを未然に防ぎ、保持時間の再現性の向上や個人差の解消をなくすためには、 混合溶媒の組成表示を正しくすることが必要です。

2.混合比率、少し複雑な場合

それでは、次の場合はどうなるのでしょうか?

a) 10%メタノール/50mM酢酸
b) 50mM酢酸/10%メタノール

これらの表示に対応する移動相の作成方法は、

a) メタノール10mLに50mM酢酸を加えて、全量を100mLにする。
b) 10%メタノール水溶液に50mMになるように酢酸を加える。

b)の場合、メタノール濃度は10%と一定なのに対し、酢酸の濃度が変化します。

以上述べてきたように、混合溶媒の作り方とその表示方法には意味があります。 正しく使えば、保持時間の再現性の向上や個人差によるトラブルを解消できます。