図 蛍光試料の励起波長(左)と蛍光波長(右) |
励起波長も蛍光波長も化合物特有の値を持っています。ただし、pH、溶媒組成などにより変化することがあります。分析を始める前に、おおよその値は分かっているはずです。搭載されている検出器のスペクトル測定機能を使って、より正確なそれらの波長を求めることもできます(上図)。
UV検出器の場合は、選択性と感度の兼合いから波長を設定することもあると書きましたが、蛍光検出器の場合は、選択性が高いので感度に絞って波長を決めます。ここで少し寄り道をして、蛍光検出器の「感度」について話しましょう。
以前、UVやRI検出器には縦軸の目盛りはあるが蛍光検出器には基準がないという説明をしました。だから、蛍光検出器では単純に、ピーク高さだけで感度を比べることができません。つまり、異なる機種間で検出器の感度設定を同じにして、ピーク高さを比較しても意味はありません。
それじゃあ、どうやって感度を比較するか。正しくはS/N比で比較しなければいけません。同じ装置の場合でも、やはりS/N比でみるべきです。
寄り道が長くなってしまいました。話を元に戻します。蛍光検出器では「感度を中心に波長を設定すればよい」ということでしたね。基本は、感度で最適波長を設定すればよいのですが、次のような場合には注意をしてください。
①励起波長と蛍光波長が近い。
②励起波長の倍の波長と蛍光波長が近い。
このような場合には、一般にバックグランド光が大きくなり、思ったほど高感度にはなりません。原因は、励起光の一部が蛍光側に検出されるからです。
励起光の一部はいつでも蛍光側に入ってきているのですが、波長の差が大きく異なれば、蛍光側で分光され問題とはなりません。しかし、①のような場合は、検出されてしまいます。
②について説明します。検知器では目的の波長を取り出すため蛍光側にも回折格子が使われています(図)。回折格子から得られた光は、その仕組みから、波長の半分、2倍、3倍の成分も含まれています。当然、これらの波長成分も蛍光側に入りこみます。②は倍光の影響を受けるということです。
②の場合には、倍光をカットするようなフィルターを励起光側に入れてください。バックグラウンド光に対して、ある程度の低減効果があるはずです。用意されているフィルターの種類、波長特性などは、それぞれの装置の取扱説明書を参照してください。
■参考